このたび聖女様の契約母となりましたが、堅物毒舌宰相閣下の溺愛はお断りいたします! と思っていたはずなのに
「ですが、イリヤ嬢が閣下と婚姻関係にあったほうが、こちらとしては都合はいいです。聖女様とお近づきになりたいと思う者はたくさんいますからね。もちろん、婚姻関係を迫ってくる者もいるでしょう。もしかしたら、強引に求める者もいるかもしれない」
 強引に求めてきた人をイリヤは知っているが、それをはね除けるだけの力があると自負している。
 ちらりと隣のクライブに視線を向けると、彼は顔色一つ変えずに神官長の話を真剣に聞いていた。今の話に心当たりはないようだ。
「本来であれば、聖女様は神殿での保護となります。ですが、イリヤ嬢は閣下と結婚されているとのことなので、閣下に聖女様の身柄をお任せしたいと思うのですが、それはよろしいですよね?」
「もちろんだ」
 つまり、イリヤにすれば何も変わらない。今までと同じようにクライブの屋敷で過ごす。
「では、聖女様の今後の生活については安心ですね」
 安心も何も、だから今までとなんら変わりはないのだ。
「……むしろ、ここからがご相談したいことなのですが」
 前のめりになった神官長は、声色を低くした。そうすると、他の魔法使いたちも顔を近づけて、まるでひそひそ話をするかのように頭を寄せている。
 逆にイリヤは引いた。それでも神官長は言葉を続ける。
「聖女様に求められるのは、瘴気を祓うことです。つまり、魔物をこの世界から消し去ること」
 それは理想論だ。魔物をすべて消し去るのは難しい。しかし、時空が歪み、瘴気が発生することで魔物の数がぐっと増える。まるでそこから湧き出てくるかのように。
「その、瘴気っていうのは、もう発生しているのですか?」
 イリヤが尋ねると、神官長は「はい」と答える。
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