このたび聖女様の契約母となりましたが、堅物毒舌宰相閣下の溺愛はお断りいたします! と思っていたはずなのに
 クライブに促され、マリアンヌを抱っこしながらトリシャのもとへと向かう。
「クライブ、マリーを預かる」
「え~、や~」
 すれ違いざま、エーヴァルトが手を伸ばしてきたが、マリアンヌはぷいっとそっぽを向く。
「マリアンヌ。お利口さんね。パパとママは少しだけお仕事があるのよ」
「あ~い~」
 トリシャに向かって腕をあげたマリアンヌを、ひょいっと抱き上げた。
「懐かしいわね。アルベルトもこんな感じだったのよね」
 離れた場所で侍従と一緒にこちらの様子をみていたアルベルトに視線を向ける。
「あ~う~」
「マリアンヌ。アルベルトのところへいきましょうね」
 トリシャとマリアンヌのやりとりを、エーヴァルトは少し悔しそうに眺めていた。
 これでマリアンヌの心配はなくなった。
 クライブと共に大広間の中央へ向かい、一礼する。
 デビュタントのとき、父親と踊ってから誰かと踊ったという記憶がない。
「緊張しているのか?」
 クライブが顔を寄せ、耳元でささやく。彼の吐息は頬をなでる。
「え、えぇ。そうですね。この状況で緊張するなっていうほうが無理ですよ」
「いつものイリヤでいればいい」
 クライブの手が腰を支えた。
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