このたび聖女様の契約母となりましたが、堅物毒舌宰相閣下の溺愛はお断りいたします! と思っていたはずなのに
クライブに連れられて、王城内を歩く。
たったそれだけのことなのに、先ほどから変な視線がまとわりついている。
「気にするな。オレが女を連れて歩いているから、珍しいだけだ」
「つまり、私がイリヤ・マーベルだから見られているわけではないということですね?」
その言葉に、クライブは、ふんと息を吐く。
「どれだけ自惚れているんだ? オレだって、お前の顔は知らなかった。オレの隣にいる女性がイリヤ・マーベルであると知っているのは、先ほどの門番くらいだろう」
「てことは、不思議ですよね。みな、私の顔を知らないのに、私のことを勝手に悪女とか毒婦とか言うのですよ。先ほどの騎士様も、私がイリヤ・マーベルだと知った途端、態度を豹変させたのです」
いや、もともと態度の悪い柄悪騎士だったが、それがいっそう酷くなったのだ。
「なるほどな……」
そう呟いたクライブが何を思ったのかは知らないが、毒婦とか悪女とか男を手玉にとるとか、そういった噂と実際のイリヤは違うということを知ってもらえれば、それでいい。
その機会がやってくるかどうかもわからないが。
「……この場所で面接を始める。だが、お前は間違いなく採用だ」
面接する前から採用された。
「それって、面接の意味がありますか?」
「ある。お前という人柄を見る必要がある。条件は満たしているから、これで不採用となれば、お前が最低の人間であったということだ。例えば、噂通り悪女、とかな」