このたび聖女様の契約母となりましたが、堅物毒舌宰相閣下の溺愛はお断りいたします! と思っていたはずなのに
 前からはくくくっと喉の奥を鳴らすような笑い声が聞こえてくる。
「エーヴァルト様。いったい、何が面白いのでしょう?」
「陛下。こちらは遊びではありません」
 イリヤもクライブも、息がぴったりと合うようにしてエーヴァルトを睨みつけた。
「いや、すまない。マリアンヌが可愛らしくてな」
「マリアンヌを愛でたいだけならば、お帰りください」
「クライブ。相変わらずしょっぱいやつだ。この、塩男め!」
 イリヤも頭を抱えたくなった。
 なぜか魔物討伐に、エーヴァルトまでついてきたのだ。
 クライブは必死に止めたらしい。しかし相手はエーヴァルトである。この国の最高権力者だ。その権力を振りかざして、無理矢理押し通したとのこと。
「だがイリヤ嬢。こう見えても、私は強いぞ?」
 その言葉の真偽は、これからわかるだろう。
「左様ですか。では、マリアンヌが怪我をしないよう、守っていただけるとたいへん助かります」
 抑揚のない声でそう告げると、エーヴァルトは「この塩夫婦め!」と吐き捨てた。
「め、め、めっ!」
 よくわからないが、マリアンヌがなぜか楽しそうであった。
 オロス侯爵であるアレンは、騎士団の第四隊長を務めており、魔物討伐に何度も足を向けた人物である。そのためオロス侯爵の城館は、魔物討伐の拠点として使用されることが多かった。
< 182 / 216 >

この作品をシェア

pagetop