このたび聖女様の契約母となりましたが、堅物毒舌宰相閣下の溺愛はお断りいたします! と思っていたはずなのに
「わかりました。では、とりあえず赤ちゃんを眠らせるってことでよろしいでしょうか?」
「できるのか?」
「眠りの魔法であれば……実は、妹たちにも何度か使ったことがありますので」
 足を肩幅程度に広げ、胸の前で両手を組む。魔力を多く消費する魔法を使う場合、こうやって無防備な姿になってしまうから、人前で使うのを避けていた。いや、使えることを他の者に知られたら悪用されるのを、母親は心配していたのだ。
 目を閉じたイリヤは、頭の中で球体を思い浮かべる。それで泣き叫んでいる赤ん坊を包み込むイメージだ。
 ぱっと目を見開く。
 ――今だ!
 黄金に輝く球体は、赤ん坊だけを包み込んだ。すると、赤ん坊の泣き声は次第に弱くなり、しまいにはすぴすぴと鼻を鳴らして眠った。
「……見事だな」
「てことは、合格ですか?」
「ああ。採用だ。ということで、かまわないですよね、陛下」
 やはり銀髪男に向かって、クライブは陛下と呼んだ。
「ああ、助かった。もしかして、例の求人を見てここに来てくれた人だろうか?」
 銀髪男の笑顔がまぶしい。だけど、目の下にははっきりとした隈ができている。
「こちら、イリヤ・マーベル嬢。見ての通り、魔法が使える娘です」
「イリヤ・マーベル……マーベル子爵家の?」
「あ、はい。イリヤ・マーベルと申します。よろしくお願いします」
< 21 / 216 >

この作品をシェア

pagetop