このたび聖女様の契約母となりましたが、堅物毒舌宰相閣下の溺愛はお断りいたします! と思っていたはずなのに
「聖女様は、泣くとああやって魔法が暴走する……。赤ん坊であるため、意思疎通ができない。腕に自信のあった乳母でさえ、自信喪失する始末。魔法の件は、国家魔法使いに依頼しようと思った。だが、聖女様は彼らを見ただけで泣く。その魔法は、彼らの想像を超えた」
「ええと。つまり……聖女様の魔力は、国家魔法使いよりも強いと?」
「……恐らく。だから、もう、藁にもすがる思いで職業紹介所に求人を出した」
「その結果、藁が捕まったということですね?」
 イリヤの言葉にクライブの口元が綻んだ。
 ドキリとイリヤの胸が高鳴った。ずっとむっつりしていた彼が笑ったなら、その意外性に胸を打ち抜かれても仕方ない。と自身に言い聞かせ、正当化しておく。
「だがその藁は思っていたより頑丈だったというわけだ。まさか、聖女様に眠りの魔法をかけられる者だったとはな……」
「ようするに、私は聖女様の家庭教師ということでしょうか? むしろ乳母? 子守りメイド?」
「どれも当たっていて、どれも異なる。今回、家庭教師という名で募集をかけたのは、先ほども言ったように藁にもすがる思いがあったため。詳細を記載して、集まる者も集まらないと困ると判断した」
 それは虚偽表示に該当しないのだろうか。
「家庭教師でありながら家庭教師ではない? どういうことでしょう?」
「我々が探していたのは、聖女様の母親となる者だ。聖女様を立派に育てあげてくれる人物。そういった意味では家庭教師ともいえなくはない」
 むしろ、養母と呼ばれるものだろう。今、はっきりと母親となる者と言ったような気がする。
 だが、王城で保護したのであれば、国王夫妻が誰よりも相応しいと思うのだが。
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