このたび聖女様の契約母となりましたが、堅物毒舌宰相閣下の溺愛はお断りいたします! と思っていたはずなのに
「……では、クライブ様?」
「様、もいらないが……呼び名一つで心は近づいたか?」
これはチャールズの入れ知恵だろうか。
イリヤはもう一度チャールズに視線を向けたが、やはり彼はこちらに無関心を貫き通している。
「そうですね。昨日よりは」
にこりともせずにそう答えたが、クライブが嬉しそうに笑ったのを見逃さなかった。その姿が、またイリヤの心をがしっと鷲づかみにする。
それを吹き飛ばすかのように声を張り上げる。
「ですが! やはりこれは契約結婚といえども、雇用契約ですから。夫婦を演じる必要があるときだけ、そう呼ばせていただきます。いえ、やはりきちんとした距離感は必要ですので、その場に応じて旦那様と呼ばせていただきます」
イリヤの言葉で、眼鏡の奥にある彼の瞳が影になる。だが、すぐにそれも元に戻った。
「ああ、そうだ。イリヤ。今日は仕立屋がくるから、そのつもりでいてくれ」
それはサマンサからも聞いた。
「はい。ありがとうございます」
「オレの妻に、みっともない格好はさせられないだろう? それにな……」
クライブの視線が宙を泳ぎ始める。また、何か嫌なことを思い出したのだろうか。
「いや、まあ。この話はまだいい」
言いかけて途中でやめられるのは、非常に気になるところではあるが。
「様、もいらないが……呼び名一つで心は近づいたか?」
これはチャールズの入れ知恵だろうか。
イリヤはもう一度チャールズに視線を向けたが、やはり彼はこちらに無関心を貫き通している。
「そうですね。昨日よりは」
にこりともせずにそう答えたが、クライブが嬉しそうに笑ったのを見逃さなかった。その姿が、またイリヤの心をがしっと鷲づかみにする。
それを吹き飛ばすかのように声を張り上げる。
「ですが! やはりこれは契約結婚といえども、雇用契約ですから。夫婦を演じる必要があるときだけ、そう呼ばせていただきます。いえ、やはりきちんとした距離感は必要ですので、その場に応じて旦那様と呼ばせていただきます」
イリヤの言葉で、眼鏡の奥にある彼の瞳が影になる。だが、すぐにそれも元に戻った。
「ああ、そうだ。イリヤ。今日は仕立屋がくるから、そのつもりでいてくれ」
それはサマンサからも聞いた。
「はい。ありがとうございます」
「オレの妻に、みっともない格好はさせられないだろう? それにな……」
クライブの視線が宙を泳ぎ始める。また、何か嫌なことを思い出したのだろうか。
「いや、まあ。この話はまだいい」
言いかけて途中でやめられるのは、非常に気になるところではあるが。