このたび聖女様の契約母となりましたが、堅物毒舌宰相閣下の溺愛はお断りいたします! と思っていたはずなのに
 *~*~*

 イリヤは朝から目が回るほど動いていた。サマンサが言っていた通り、その日は仕立屋がやってきた。採寸され、デザイン案をいくつも見せられたあげく、生地を選ぶ。
 クライブがファクト公爵であることを考えれば、彼と(契約)結婚をしたイリヤは公爵夫人となるのだろう。しがない子爵令嬢から大出世ではあるが、やはり公爵夫人として彼の隣にはふさわしい格好で立ちたい。
 そうやっていろいろ物事を決めていると、マリアンヌがイリヤを求めて泣いてどうしようもないと、ナナカが助けを欲してきた。泣き止まないマリアンヌを抱っこしながら、次々と話を進める。忙しくしていると、マリアンヌがかまってもらいたそうにして泣くのは不思議である。もしかしたら、クライブよりもいろんな意味で空気の読める子かもしれない。
「奥様、お疲れですね」
 この状況で疲れないほうがおかしいだろう。
 クライブと出会って、時間的にはやっと丸一日経ったところである。
「あ~、あ~」
 やっとソファに身体を預けて休んでいるイリヤの膝の上では、マリアンヌが機嫌よく何かをしゃべっていた。
「お茶が入りました。お疲れのようですので、甘いお菓子を準備いたしました」
「あ~、あ~」
 マリアンヌが手を伸ばす。
「マリー、めっよ、めっ。あなたはまだ食べられないのよ。マリーもお腹が空いているのね」
「あ~、う~」
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