このたび聖女様の契約母となりましたが、堅物毒舌宰相閣下の溺愛はお断りいたします! と思っていたはずなのに
 クライブのことだから、すぐに着替えてやってくるだろう。ついでに浄化魔法を使えばよかったなと思ったけれど、魔法は信頼のおける者の前でしか使ってはいけないと注意を受けたばかりだ。エーヴァルトもイリヤが魔法を使えるのは知っているが、だけど彼の前で魔法を使えばクライブに叱られそうな気がした。なんとなく。
「あ~だ~」
 マリアンヌは手足をばたばたとさせているのだが、これはお腹が空いたときの動きでもある。まだ二日しか一緒にいないが、なんとなくわかってきた。なんとなくだが。
「もうちょっとでパパが来るからね。パパが来るまでお利口にしていましょうね」
「だ~だ~」
「あんなやつのこと、待つ必要ないだろう? マリアンヌがしたいようにすればいい。お腹が空いているのでは?」
「そうなのですが。今日から離乳食を始めようかと思いまして。初めての離乳食ですから、せっかくならクライブ様も一緒にいたほうが、家族らしくていいですよね?」
 ひくりと、エーヴァルトのこめかみが動いた。
「離乳食? マリアンヌが?」
「はい。正確な月齢はわからないのですが、生後半年は過ぎているのかなと思いまして。おすわりはまだ不安定ですが、腰はしっかりとしてきていますし。よく見たら、歯も生えそうなんですよね。涎もいっぱい出ているようですし」
「なるほど。それで今から離乳食を? 私がそれに立ち会えると?」
 エーヴァルトはマリアンヌの初めての離乳食の場にいられることに、喜びを感じているようだ。
「待たせたな」
 着替えを終えたクライブがやってきた。
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