このたび聖女様の契約母となりましたが、堅物毒舌宰相閣下の溺愛はお断りいたします! と思っていたはずなのに
 イリヤ自ら離乳食を与えるのは、イリヤの希望でもある。妹たちにもこうやってあげていたし、何よりもマリアンヌを自分の手で育てたいと思っていた。
「あ~」
 マリアンヌが口を開けた隙に、スプーンを口の中に入れる。上顎にこすりつけるようにしてスプーンを引くと、マリアンヌはもごもごと口を動かしている。
「マリアンヌが食べた。これは、感動ものだ」
 親より馬鹿になっているエーヴァルトは、瞳をきらきらと輝かせている。
「だ~」
 だが、マリアンヌのお口に合わなかったのか、口から少しだけ出した。
「その顔もかわいい」
「いいいから、お前は黙って食べろ」
 そう言ったクライブの手も動いていなかった。みな、マリアンヌの食べる様子を、固唾を飲んで見守っていたのだ。
「奥様、お預かりします」
 ナナカの手には哺乳瓶がある。
「あ~あ~」
 哺乳瓶に手を伸ばそうとしているマリアンヌを、ナナカが抱き上げた。
 今日は一匙だけ。少しずつ、食べる量を増やしていく。
 ナナカの腕の中で、マリアンヌは哺乳瓶に手を添えてごくごくと勢いよくミルクを飲んでいた。
「あぁ。マリーがかわいすぎる。それに、なんて素直なんだ。これなら、王城に連れて帰っても問題ないな?」
「やめてください。誰がマリアンヌの世話をするんですか? オレにだって仕事があります。公私混同したくない」
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