このたび聖女様の契約母となりましたが、堅物毒舌宰相閣下の溺愛はお断りいたします! と思っていたはずなのに
 むしろ目の前の国王の公私混同が酷すぎるような気がする。
「そんなの、イリヤ嬢にやらせればいいじゃないか。イリヤ嬢はマリーの母親なんだから。それに今だってイリヤ嬢の言うことは素直にきいているじゃないか」
「まぁ、陛下の言うことはさっぱりききませんがね」
「そういう塩対応のマリーもかわいいのだよ」
 エーヴァルトに何を言っても無駄であることはわかった。
 ミルクを飲み干したマリアンヌはナナカが部屋へと連れていく。もちろん、それにはエーヴァルトが散々文句を言った。ナナカも困った様子ではあったが、クライブが「放っておけ、無視しろ、気にするな」と口にしてくれたおかげで、彼女も安心してマリアンヌと部屋に戻った。
「イリヤ嬢。お願いがあるのだが」
 エーヴァルトから「お願い」と言葉が出たら、嫌な予感しかしないのはなぜだろう。まだ、二度しか顔を合わせたことがないというのに。
 しかし隣のクライブに助けを求めるために視線を向けたら、彼もひくひくとこめかみを震わせている。このお願いは聞いていいものなのかどうか。
「なんでしょう?」
 引きつった笑みで問い返す。
「二日に一回、マリーを私の執務室に連れてきてほしい」
「却下」
 すかさず断りの言葉を口にしたのは、もちろんクライブである。
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