このたび聖女様の契約母となりましたが、堅物毒舌宰相閣下の溺愛はお断りいたします! と思っていたはずなのに
 イリヤは首を傾げた。可能性としてはいろいろと考えられる。
「もしかして、陛下のご命令ですか?」
「ああ……そう、かもしれないな」
 視線を泳がせているクライブの姿を見れば、本当にあの国王が絡んでいるとみて間違いないだろう。
「聖女召喚の儀を行ったけれど、またマリアンヌのような赤ん坊が召喚されたとか、ですか?」
 尋ねると、クライブは慌てて否定する。
「そうではない。聖女はマリアンヌであるから、マリアンヌがここにいる以上、新たな聖女召喚は行えない」
「そうなんですか。赤ん坊であっても聖女は聖女ということなんですね?」
「そうだ」
 となれば、やはり孤児院や貧民院から魔力のある子を引き取ったのだろうか。魔力のある子は、幼いうちからその力の使い方を学ぶ必要がある。魔力の使い方がわからない子は、力を暴走させることも多く、器物破損や人へ怪我をさせるといった問題が起こるのだ。
「孤児院からの子を引き取ったのですか? もしかして、魔力のある子?」
「ん? どういうことだ?」
「ですから、マリアンヌに兄弟をとおっしゃっていましたよね。だから、新しい聖女様が召喚されたか、孤児院から魔力のある子を引き取ったかと思ったのですが。違いましたか?」
 なぜかクライブは、うぅと唸っている。
「そういった話ではない……」
 彼は少しだけ苦しそうに呟いた。その意味がわからず、イリヤの心の中にはもやっとした気持ちが残った。
< 92 / 216 >

この作品をシェア

pagetop