このたび聖女様の契約母となりましたが、堅物毒舌宰相閣下の溺愛はお断りいたします! と思っていたはずなのに
「あ~あ~あ~」
 機嫌のよいマリアンヌの声が、馬車内に響く。
 王城へ着くと、クライブがマリアンヌを預かった。身体もしっかりとしてきたため、抱っこしながら歩き続けるとイリヤの腕も痛くなる。だから、少しの間であってもこうやってクライブがマリアンヌを抱っこしてくれるのは助かる。
 マリアンヌを連れてエーヴァルトに会うときに通されるのは、ライブラリーであった。壁一面に本がずらりと並んだ本棚があるが、ここには幼い子が読むような絵本も多い。アルベルトが勉強したり遊んだりするときにも使う部屋のようだ。
「あぁ。マリー会いたかったよ」
 部屋へ入るとすぐに、クライブごと抱きしめるかのようにエーヴァルトが腕を広げてきた。クライブは身をかがめてするりとそれをすり抜けて、アルベルトの前に立つ。
「アルベルト殿下。マリアンヌをお連れしました。今日もよろしくお願いします」
「マリー、げんきだった?」
「あ~う~」
 子ども同士、大人にはわからない何かで通じ合っているようだ。
「今日も来てくれてありがとう」
 トリシャが上品な笑みを浮かべる。イリヤもそれに応えた。
「アル、マリーを私に抱っこさせなさい」
「ちちうえ、ぼくだってマリーとあそびたいのです」
 マリアンヌをめぐって、親子喧嘩が勃発しそうな勢いである。その間に入っているクライブは、アルベルトを宥めエーヴァルトに怒鳴っている。
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