このたび聖女様の契約母となりましたが、堅物毒舌宰相閣下の溺愛はお断りいたします! と思っていたはずなのに
「本当に相変わらずね、あの人たち」
 どこか遠くを見つめるかのようなトリシャの瞳は、過去の記憶を探っているようにも見えた。
「あそこはクライブにまかせて、私たちは私たちで」
 片目を瞑ったトリシャを見ると、親近感が沸いてくる。
 イリヤはマリアンヌを囲っている人たちのことは放っておいて、彼女とティータイムを楽しむことにした。
 室内の日当たりのいい場所にある一人がけのソファと小さな白いテーブル。そこにはすでに、二人分のお茶が準備してあり、テーブルを挟んで向かい合って座る。
「トリシャ様とクライブ様は、幼い頃からのお知り合いであると聞いたのですが……」
 それは、クライブがエーヴァルトの愚痴を言い始めたのがきっかけである。マリアンヌを連れていく前日は、エーヴァルトがいろんな意味で重症らしい。なんとか政務はこなしてくれるものの、クライブのストレスがたまると言っていた。
 がつんとトリシャから一言、言ってもらえばいいのでは? と提案したイリヤだが、クライブはその答えを濁した。むしろ、イリヤからトリシャに頼んでほしいとまで言う始末である。
「ですが、珍しく。トリシャ様は閣下の苦手な人物のようなんですよね」
 少しでもクライブの弱みを握っておきたいという気持ちが、イリヤの中にふつふつと沸き起こっていた。
「ああ、それね」
 トリシャはイリヤの言葉に心当たりがあるのだろう。含みを持たせて微笑むと、喉を潤すかのように紅茶を飲む。
「前にも言ったかと思うけれど、私とエーヴァルト、クライブは幼馴染みのような関係でね」
 トリシャも元は公爵令嬢、そしてクライブも公爵子息であった。父親が王城に出入りできるような官職に就いており、同い年のエーヴァルトもいたことから、彼に引き合わされたらしい。
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