眠れる海の人魚姫〜政略結婚のはずが、御曹司の一途な執着愛に絡め取られました〜
茹だるような夏の昼下がり、美雨は嶺人とともに道を歩いていた。美雨の中間試験の結果が出て、それがなかなか良い成績だったのでご褒美と称して水族館へ出かける途中だったのだ。
美雨にとってはデートだったが、嶺人にとっては子守だっただろう。
本来であれば嶺人は手の届かない雲上の人だった。美雨が社長令嬢といえど、岬グループの御曹司は易々と口をきける相手ではない。
けれどたまたま父親同士が同じ大学の出身ということで親しく、さらに美波と嶺人が同じ高校に通うクラスメイトだった。その縁で嶺人は美雨の勉強を見てくれており、だから「ご褒美」が成立したのだ。
『美雨は最近、よく勉強を頑張っているな。何かやりたいことでもできたのか?』
隣を歩く嶺人が笑って美雨に聞いた。口ごもっていると『教え子が優秀だから、俺はそのうちいらなくなるかもな』なんて冗談めいて言われるものだから、美雨はひやひやしてしまう。
『そんなことありません。嶺人くんの教え方が上手だから私の成績も伸びました。……でも、やりたいことはある、かも、です』
嶺人は優しい顔で美雨を見下ろしていた。美雨はその表情が大好きで、大嫌いだった。それは妹を見守る良き兄そのもので、自分と彼の間にどうしても飛び越えられない彼我の差があるのだと思い知らされる。
『そうだったのか。なら、俺にも教えてくれないか?』
美雨にとってはデートだったが、嶺人にとっては子守だっただろう。
本来であれば嶺人は手の届かない雲上の人だった。美雨が社長令嬢といえど、岬グループの御曹司は易々と口をきける相手ではない。
けれどたまたま父親同士が同じ大学の出身ということで親しく、さらに美波と嶺人が同じ高校に通うクラスメイトだった。その縁で嶺人は美雨の勉強を見てくれており、だから「ご褒美」が成立したのだ。
『美雨は最近、よく勉強を頑張っているな。何かやりたいことでもできたのか?』
隣を歩く嶺人が笑って美雨に聞いた。口ごもっていると『教え子が優秀だから、俺はそのうちいらなくなるかもな』なんて冗談めいて言われるものだから、美雨はひやひやしてしまう。
『そんなことありません。嶺人くんの教え方が上手だから私の成績も伸びました。……でも、やりたいことはある、かも、です』
嶺人は優しい顔で美雨を見下ろしていた。美雨はその表情が大好きで、大嫌いだった。それは妹を見守る良き兄そのもので、自分と彼の間にどうしても飛び越えられない彼我の差があるのだと思い知らされる。
『そうだったのか。なら、俺にも教えてくれないか?』