セブンアンドシックス

第3話 ありえない差し入れ!!!

◯夜 車の後部座席にて

梛々子(なんなのこいつ――!!!)
(早くアパートに着け!解放されたいーー!!!)

梛々子がヤキモキしてると、車がアパートの前に到着。
だが、梛々子の部屋の前まで六花がついてくる。

梛々子「な…なんでついてくるんですか!」
六花「念のため」
梛々子(なんのためよー!!)
「必要ないんです!」

梛々子がギャイギャイと文句を言いながら、二階にある部屋の前にたどりつく。六花は周囲に目を配る。

梛々子「あ…」

梛々子は部屋の前で難しい顔をしている。
視線の先にはドアノブ。またスーパーの袋が引っかかっている。

六花「それは?」
梛々子「差し入れかなと思うんですけど…」
六花「差し入れ?」
梛々子「それが…ちょっと前からこんな風にドアノブに引っ掛けてくれるようになって」
「おにぎりとかペットボトルのお茶とか。時々プリンも」
「隣の人かな?って思ったけど違うみたいで…」
六花「誰からか、わかってないのか?」
梛々子「はい」

六花は梛々子の手にある袋を奪い取る。

梛々子「?」
六花「……」

袋の中を探り、小さな箱を取り出す六花

梛々子「…チョコレート?」
六花「お前、バカか?」
「煌夜と使わなかったのか?」
梛々子「煌夜と???」

険しい顔をした六花が箱を梛々子に見せる。『薄ピタ生感覚1200』と書かれている。

梛々子「へ…? うすぴた??」
六花「避妊具だ」
梛々子「?!!?!」

悲鳴が言葉にならず、顔を真っ赤にして後ずさりする梛々子。

梛々子「なななな…!」
(なんでそんなものがうちに!?!)
六花「…お前、近くに身寄りはいないのか」
「少なくとも今夜泊めてもらえるような友達や親類は」

六花が梛々子に一緒に入っていたメッセージカードを見せる。
メッセージカードには『いつもお疲れさま! 今度、これを僕といっしょに使お♡』と書かれている。

梛々子(え――?)

サァッと血の気が引く梛々子。

梛々子「な、なに…これ…もしかして…」
(煌夜――?)
六花「煌夜じゃないな」「煌夜は『僕』と漢字で書けないはずだ」
梛々子(ハ?そこ???)

煌夜がテヘペロしている様子を思い浮かべるふたり。お世辞にも賢いとは言えない…。

梛々子(いやいやいや――!)

気を取り直す梛々子。

梛々子「で、でもこんなの…誰かの部屋と間違えたのかも!」
六花「可能性は0ではないが、かなり低いだろうな」
「いつもドアノブに袋が引っかかってたんだろう?」
「それをお前は疑いもなく受け取っていた」
梛々子「そ、それは――」

苦い表情をにじませる梛々子。心当たりはなかったが、正直、おにぎりやお茶の差し入れは助かっていた。

六花「差出人が誰かわからない以上、ひとりでいる時間を避けろ」
梛々子「そ、そんなこと言っても…」
梛々子(いきなり泊めてもらえるような友達はいないし、おばあちゃんちは取り壊されちゃったし…)
六花「父親の家は? せめて今晩だけでも――」
梛々子(!)
「あっあそこに行くくらいなら、ひとりでここにいますっ!」

六花を遮るように声を張る梛々子。怪訝そうに眉をひそめる六花。

梛々子「す…すみません…でも、父の家に行くのだけは…義母に会うのが嫌で…」

両腕で自分の身体を抱きしめる梛々子。急に怯えた様子に。

梛々子「駅前の漫喫に行きます…あそこなら店員さんもいるし、防犯カメラもあるし…」
六花「……」

ふぅっと溜息を吐く六花。スーツのジャケットの内ポケットからスマホを取り出し、電話をかけはじめる。

梛々子「?」
六花「俺だ。いきなりで悪いが、女をひとり部屋に泊めてやってくれないか」
「ああ、そうだ」「……すまんな、助かる」

短く言葉を交わし、電話を切った六花。梛々子を振り返る。

六花「荷物を作れ。今夜の宿が見つかった」
梛々子「えっええっ?!」
「そそそそそんなっ、迷惑はかけられません!」
六花「しのごの言うな。迷惑かけたくないと思うのなら、さっさと荷造りしろ。俺を待たせるな」
「先に部屋ごと燃やすぞ」

梛々子を凄む六花。

梛々子(な、なにこの男――!! 本当に弁護士なの⁈)

ヒィイイと心の中で悲鳴を上げながら荷造りを開始するん梛々子。


◯場面転換 同じ夜。とある高級マンション。きらびやかなポーチ

梛々子(うわぁああ…!すっご!)

圧倒され、口をぽかーんとあける梛々子。

六花「ぼーっとするな、置いてくぞ」
梛々子「ひゃっ!は、はい…」

大きめのリュックサックを抱え、六花のあとをついて行く梛々子。
エレベーターを降りて角部屋へ。
六花がインターホンを鳴らす。

梛々子(ってか、言われるままホイホイついてきてよかったのか私…この人の方こそ、信用していいのかな…)

インターホン越し▶︎『ハイハーイ』
六花「俺だ」
インターホン越し▶︎『開いてるわよー』

六花が玄関ドアを開け、中に入ると、

marico「いらっしゃーい!早かったわね」
「部屋を用意しといたわ」
六花「いきなりで悪いな」
marico「なに水臭いこと言ってんのー!うちの大事な梛々子ちゃんなんだから全然平気!」
梛々子(え…?)

六花の後ろにいて誰としゃべっているのかわからなかった梛々子。ひょいっと中をのぞくと、そこにはバイト先のバーのマダム、maricoの姿があった。

marico「ナナコちゃんいらっしゃい!入って入ってー!」
梛々子「maricoさん⁈ え、ということは、ここはmaricoさんち…?」
marico「えーなにをいまさらー? あ!わかった!さては六花、なにも言わずに梛々子ちゃん連れてきたね?!」
「この男、前からそういう性格よね! 説明が少なすぎんのよっ!」

maricoにうながされ、中に入る梛々子。広いリビングにダイニングキッチン。ロフトがあり、上に赤いソファが見えた。

marico「梛々子ちゃんの部屋はこっち!」

リビングから続く扉を開け、部屋に案内される梛々子。ベッドやテレビ、テーブル、二人がけのソファまである。

梛々子「え…すごい豪華…」

北欧風のおしゃれなインテリア。圧倒される梛々子に対し、

marico「海外にいる妹が帰国したときに使ってる部屋なんだけど、ベッドのシーツは替えておいたし、好きに使ってね!」

maricoが得意げにウィンクする。
亜麻色のカラーにゆるふわロングにmarico。
スタイル抜群で、今夜も赤いキャミワンピにストールを羽織っていた。

六花「俺はそろそろ帰るぞ」「marico、あとは頼んだ」
marico「ハーイ」

梛々子「え…あの…」
六花「またな」

ドキッとする梛々子。

梛々子(また、があるの――?)

maricoと六花が言葉を交わす姿を見ながら、

梛々子(変なの私…煌夜とあんなことになって、それから、アパートまで…)
(でも…)

妙に胸がドキドキする梛々子。六花をつい、目で追ってしまう。
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