海が凪いだら迎えに来てね〜元カレ海上保安官に極秘出産が見つかるまでの軌跡〜
「─…俺は萩花が好きだ。だからっ・・・これ以上、一緒に居るのがっ…怖いんだよ。」
見たことの無い、怯えたような表情で凪砂が語り始める。
「萩花と別れる2ヶ月ほど前に、仕事でずっと一緒だった同期の奴が俺の目の前で……死んだ」
思ってもいなかった告白に、俺たちは全員固まり誰一人…口を開くことが出来なかった。
「沈没した船の捜索で、海に潜っている時・・・一緒に船を見つけた直後、動くはずがないと思ってた船のエンジンが急に動いてっ・・・回り始めたスクリューに、巻き込まれていったアイツを、俺はただ見てることしか出来なくてっ・・・」
その時の凪砂の恐怖なんて、俺にはこれから先の人生を、一生かけても理解してやることは出来ないだろう。
微かに震えている凪砂の手を見れば、その話が嘘ではないと言うことは明確だ。これ以上続けさせて大丈夫なのか?っとさえ思えるほど、凪砂の表情はひどく怯えているように見えた。
「普段から冷静でいることを、自分自身に言い聞かせて行動していたつもりだったが・・・その時の俺は、完全に取り乱してっ・・・水深から急浮上したんだよ。」
──…急浮上
そんなの、俺が凪砂の立場でも同じだったと思う。目の前で仲間が危険な目にあって、冷静で居られる奴がいるなら会ってみたい。
「水深から急浮上すれば、減圧症なるなんて・・・別に潜水士に限った話じゃない。ダイビングしてる奴でも知ってるほど常識的な・・・危険な行為だ。そんなことも忘れるくらい、とにかく俺は取り乱してっ…目が覚めたら病院に居て…しばらく入院してたんだ」
俺を始め、他の二人も凪砂が入院していたなんておそらく知らされていなかったし、想像もしていなかった内容の話しに、とても安易な発言をできる空気ではなく、再び凪砂が語り出す。