もつれた心、ほどいてあげる~カリスマ美容師御曹司の甘美な溺愛レッスン~
 3カ月足らずの施術で見た目がどう変わろうと、わたしが彼女たちに太刀打ちできるわけがない。

 だから。
 こうなることが自分でもわかっていたから。
 玲伊さんに近づきたくなかった。
 
 鼻の奥が痛くなってくる。

 やだな。
 何、泣いてるんだろう、わたしは。
 いまさら、泣くことじゃないのに。

 ティッシュをひっぱりだし、鼻をかんだ。

 玲伊さんが優しくしてくれるのは、親友の妹だから。
 彼のなかのわたしは、あの頃の《小さい優ちゃん》のままだから。
 
 これからの数カ月。
 プロジェクトが終わるまで、この気持ちを抱えていかなければならないんだ。

 引き受けたことは後悔はしていないけれど、想像以上にきつい日々になることはたしかだ。

 そのことを、わたしはあらためて覚悟しなおした。


***

 そして、その週の日曜日。
 その覚悟が、まさに現実だと思い知らされる場面に遭遇することになった。
 
 撮影が始まる前日のこと。

 薄曇りだったけれど、雲の切れ間から日が差し込んでいた。
 わたしはたまった洗濯物を片付け、たまには散歩でもしようかと、外苑前のほうまで出かけた。

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