もつれた心、ほどいてあげる~カリスマ美容師御曹司の甘美な溺愛レッスン~

***


 8時少し前に夕食を終え、わたしは8階のVIP専用サロンに向かった。
 先日、玲伊さんがメイクをしてくれた、あの部屋だ。

 エレベーターの扉が開くと、そこはまるで別世界だった。
 他の階とは印象がまるで違う。

 廊下には赤い絨毯が敷きつめられていて、突き当りにあるドアは重厚な木製で天井まで高さがある。

 この前は玲伊さんの部屋から直接、サロンに入ったから、こんなにすごい空間が広がっているなんて知らなかった。

 さすが、VIP専用。
 でも、VIPって一口に言うけど、いったい、どんな人たちのことを指すんだろう?
 わたしには想像もつかない。
 
 ドアは自動で、その前に立つと厳かに開いていく。
 扉の向こうには黒いスーツ姿の玲伊さんが立っていた。

「ようこそ。お待ちしておりました」

 大切な顧客を出迎えるように、彼は胸に手を当てて丁寧に一礼した。

 慇懃(いんぎん)な姿勢を崩さない玲伊さんは、まるで英国貴族に仕えるバトラーのようで、自分がお嬢様になったように錯覚してしまう。

「玲伊さん……」

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