もつれた心、ほどいてあげる~カリスマ美容師御曹司の甘美な溺愛レッスン~
「店まで送っていけなくてごめんな」
「そんな……大丈夫です。まだそんな遅くないし、目と鼻の先ですから」
「でも、夜には違いないんだから、気をつけて帰れよ」

 じゃあ、またな、とハグしようとしてきた玲伊さんを、わたしは慌てて手を前に出して制した。

「ん?」
「あの……できればハグはなしで」

 わたしは頭を下げてお願いした。
 顔を上げると、玲伊さんはちょっと眉を寄せている。
 
「俺にハグされるのは嫌?」

 そんなストレートに聞かれると困るんだけど。

 わたしは首を振った。
「嫌じゃないんですけど」
「けど?」

 そんな風に見つめないでほしい。

 正直に、好きな人にハグされるのが辛い、と言うわけにもいかないし。

 わたしは一生懸命、言葉を探した。

「この間のお話で、ハグに効用があるのはわかりました。でも、わたし……男の人にハグされたの初めてで、ドキドキしすぎて、夜、よく眠れなくなっちゃって」

 嘘ではない。本当にそうだったのだ。

 玲伊さんは一瞬、目を丸くして、それから、痛みをこらえるときのように額に手を当て、そのまましばらくじっとしていた。
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