もつれた心、ほどいてあげる~カリスマ美容師御曹司の甘美な溺愛レッスン~
 「おばあちゃん……」

 「心配してくれる気持ちは、本当にありがたいんだよ。だけどさ、玲伊ちゃんのところに住むってだけの話だろう。別に外国に行く訳でもなく。ほんの目と鼻の先じゃないか。それに優紀は毎日、ここに来るんだし」

 それに、と祖母は付け足した。

 「玲伊ちゃん、あれだけの男前だよ。ちゃんとそばにいないとだめだよ。もし、とんびに油揚げを(さら)われるようなことになったらどうするんだい?」

 「玲伊さんに限って、そんなことないもん」

 「おやおや、ずいぶんな自信だね。でも、優紀。人生には絶対なんてことはないんだよ。後悔先立たず、って言うじゃないか。悪いことは言わない。年寄りの言うことは聞くもんだよ」

 「うーん」

 その後も、日をあらためて、何度となく話し合ったけれど、祖母は最後まで意見を曲げなかった。

 わたしと祖母じゃあ、最初っから勝負にならない。
 意地っ張りの年季が違いすぎる。

 結局、それから十日ほど後、わたしは玲伊さんの部屋に引っ越し、高木書店に通うこととなったのだった。

 一人暮らしになる祖母のために、玲伊さんが見守りサービスを手配してくれた。

 「そんなの必要ないって。もったいないじゃないか」と祖母はしばらく承知しなかったけれど。
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