もつれた心、ほどいてあげる~カリスマ美容師御曹司の甘美な溺愛レッスン~
「苗字で呼び合うのも、なんだか堅苦しいですよね。えーと、優紀さんって呼んでもいいですか?」

「もちろん、岩崎さんは」

(りつ)っていいます。男みたいでしょう」
「いいえ、とっても素敵な名前。じゃあ、律さんでいいですか」

 彼女は、はいと元気に答えた。


「優紀さんのお宅は、道を渡ったところの一本裏にある本屋さんですよね」
「はい。祖母とふたりで細々と営んでます」

「わたし、あそこの商店街の『アンジェ』によく行くんです。レトロで可愛いでしょう、あそこ。今度、本、買いに行きますね」
「わあ、ぜひ」


 律さんとはエレベーターの前で別れて、わたしは従業員口に向かった。

「ありがとうございました」と警備員さんに挨拶をして、出て行こうとドアに向かったそのとき、後ろから「優ちゃん」と声をかけられた。

 見ると、玲伊さんが「終わった?」と言いながらこちらに向かって歩いてきていた。

「あ、玲伊さん。お客さまはお帰りになったんですか」
「いや、今、カラー中で、時間を置いているところ。すぐ戻らないといけないんだけどね」

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