もつれた心、ほどいてあげる~カリスマ美容師御曹司の甘美な溺愛レッスン~
 そうだ。彼はあくまでわたしを妹として見ているのだ。

 じゃあ、わたしも、玲伊さんをもう一人の兄と思えばいい。

 律さんだって、幼なじみというだけで、あんなに羨ましがってくれていたのだ。

 玲伊さんの〈妹ポジション〉
 うん。もうおつりがくるぐらい、ありがたいことだ。

「行きます……行きたいです」

 ようやく答えたわたしに、玲伊さんは嬉しそうに口角を上げた。

「よし。夕方、迎えに行くよ。お店、何時で閉めるんだっけ?」
「7時です」
「じゃあ、そのころに」

 わー。

 叫び出したいような、そんな気持ちを抱えたまま、わたしは自分の店に戻った。

 高木書店の看板を見たときほっとため息をついた。
 上の空のままで道を歩いていて、よく車にぶつからずに帰れたと。

「おかえり」
 祖母の声で我に返る。

「なんだい。まるでたった今、夢から覚めたような顔して。お昼はもう済んだ?」

「あ、帰りにコンビニで買ってこようと思って忘れてた」
「おやおや、今日に限って、何にも残ってないけど」と祖母は肩をすくめた。

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