このままずっと甘い夜を 〜再会した元恋人は溢れる愛を押さえきれない〜
そして、わたしに手を差し出す。


「行こう。澪の居場所はここじゃない」


そうして、わたしを富士川家から連れ出してくれた。

本当の意味で。



その後、名取くんに言われたとおりにお父さんは社長職を辞任。

富士川電機とナトリホールディングスの取引は何事もなく継続しているけれど、長年続いた富士川家の親族経営はここで途絶えた。


噂では、お父さんたちは家と土地を売却。

愛理さんをなんとか音大へ通わせながら、賃貸マンションで暮らしていると聞いた。


きっともう会うこともないだろう。


わたしはというと、名取くんの家族から快く迎えられ、家族という温かみに日々幸せを噛みしめている。



* * *



そして、いよいよそのときが訪れる――。


分娩室に響く力強い産声。


この日、わたしは元気な男の子を出産した。
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