皇帝陛下がやっぱり離縁したくないと言ってくるのですが、お飾り妃の私が伝説の聖女の生まれ変わりだからですか?
エドガーはミッテール皇国の国境に位置する、この街の統治を任されている。

しかし養父がいくら辺境伯とはいえエリーヌは養女、それも亡き実父は貴族の中でも階級の低い男爵であったのだから。
皇族とは一生縁がなくてもおかしくない身分と言ってもいい。むしろこうして招待されるほうがおかしいのである。

それがなぜいきなり招待状など届くのか、エリーヌは困惑しかない。


「でもどうして……」
「エリーヌはダリルを覚えているかい?」
「ええ、もちろんです」


彼が最後にヴィルトール家を訪れたのは一年ほど前だ。これまで何度か会ったことがあるが、ミッテール皇国はもちろん周辺諸国の歴史にも造詣が深く、魔法にも精通している。


「どうやら彼の口添えらしいのだ」


ダリル・フローレスは魔法省に属する魔石研究所の責任者でもある侯爵だ。


「ダリル様の? どういうことですか?」
「詳しい話は聞いていないのだが、おそらくその魔石について調べたいのだろう」
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