皇帝陛下がやっぱり離縁したくないと言ってくるのですが、お飾り妃の私が伝説の聖女の生まれ変わりだからですか?
不思議な魔石


「私が宮殿で開かれるパーティーに出席!?」


赤、白、黄の花が咲き乱れる広い庭に、エリーヌ・ヴィルトールの鈴のように軽やかな声が響き渡る。それに驚き、近くで羽を休めていた蝶が二匹、ふわりと飛び立った。

家族三人のささやかなお茶会の場ににわかに緊張が走り、エリーヌの大きな瞳には不安が色濃く滲む。まるで合図のように吹いた風が彼女のピンクブラウンの長い髪を揺らした。


「そうなんだ。公式に招待状が届いている以上、出席する以外にあるまい」


苦虫を噛み潰したような顔で答えたのはエリーヌの養父であり、辺境伯のエドガー・ヴィルトールである。組んでいた腕を解き、内ポケットから封書を取り出した。

生成り色をしたそれから出てきた二つ折りの紙を開くと、上部中央に刻印されたものが真っ先に目に入る。盾を中心に鳥が翼を広げた絵柄――皇族の紋章だ。
まさしく公式の文書、宮殿からよこされたものだとわかる。
魔力を持つ人々と、魔力を持たない人たちがともに暮らすミッテール皇国。その皇都から離れた国境の街、ランシヨンに暮らすエリーヌに、皇族からじきじきにそのような達しがあるとは想像もしていない。思わずごくりと喉を鳴らした。
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