リングノート〜必ず君を甲子園に連れて行く〜

野球はチームスポーツ

「おいお前ら集まれ。練習前にお前らに話がある。」

げ、もしかして今日俺が授業で寝てた事と関係ある?

俺はそう思いながら、

キャッチボールをしていた手を止め

工藤監督の元に走る。


「お前らの中に、今日、授業で寝ていた奴がいる。」

げ、俺やん。

「お前らの本業は、学業じゃねーのか?どんだけ野球が上手くたって、本業の勉強ひとつ頑張れねー奴が、甲子園に行けると思うか?そんな奴に野球やる資格はねぇよ。今日から期末テスト終わるまで、誰1人としてバットもグローブも、ボールも触らせん。野球はチームでやるスポーツだ。だから罰も連帯責任として全員で背負え。」

「、、、。」

「期末テスト終わるまで、練習時間は筋トレとランニングのみ!!その間も教科書持って勉強しながらやれ!!!」

「、、、。」

突然のことに、みんな言葉が出ない。

「お前ら返事は!!!」

「「「「「はいっっっっ」」」」」

「あとひとつ、次の期末テスト、赤点が1つでもあったやつは半年間、練習試合はもちろん、春の甲子園にも、試合には全て出させねぇ。どんだけ野球が上手いやつでも、だ。わかったな。」

そう言って工藤監督はどこかへ行ってしまった。


監督が見えなくなると、2年生で1番怖い、

暴力振るいがちの内藤先輩が言う。

「おい!!!!授業中、寝てるのが監督にばれたのはどこのどいつだ!!ぁあ?男なら堂々と出てこい!!」

そう言うが、殴られると分かっていて

出ていくバカがどこにいる。

「誰も出て来ないんなら1年全員1発ずつ殴るぞ!ぁあ?!!」

仲間を犠牲にすることはできない。

そう思って出て行こうとすると、

「まぁまぁ、内藤、そんくらいにしとけよ。まず1年とは限らないだろ。それに赤点取らなきゃいい話だろ。それまでは筋トレとランニング出来るんだし、まだいいじゃねぇか」

そう言ったのは2年の南雲先輩だ。

南雲先輩は俺の憧れの人である。

プロ入り確実とも言われている南雲先輩が

マウンドで投げる姿は本当にかっこいい。

味方の俺でも怖いと思ってしまうくらいの威圧で

バッターを圧倒し、次々と三振を取っていく。

それなのに、マウンドを降りると穏やかで

優しくて本当にいい人なんだ。

その南雲先輩に俺は救われた。

殴られずに済んだ、、、。


「おい、翔」

その後、誰にも聞こえないように

声をかけてきたのは南雲先輩だった。

「お前だろ、授業で寝てたのは。」

「え、なんでわかったんですか、、、」

「お前わかりやすいんだよ。お前の表情見てりゃわかるよ。」

さすが南雲先輩。高校野球の中で、

牽制成功率1位を誇る南雲先輩だ。

周りがよく見えている。

「ほんとうにすみませんっ。じゃあさっき、犯人俺ってわかってて庇ってくれたんですか?」

「まぁな。内藤は、カッとなると後先考えずに行動しちまうからな。万が一お前が怪我でもしたら、それは俺たち野球部の危機だろ?」

「それは南雲先輩がいるから大丈夫っすよ。」

俺はそう言ったが、

「全試合俺1人で投げるのはさすがに無理よ。お前、頼りにしてっからよ。頑張れよ。まぁその前に、次の期末、赤点取らないでくれよ。」


よし!!! 

南雲先輩がそう言ってくれてるんだ。

次の期末テスト、絶対に赤点回避するぞ!!!
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