離婚前提婚~冷徹ドクターが予想外に溺愛してきます~
変なことをされそうになったらすぐに逃げると母と約束し、私は今ここにいる。

「先生、私のことお金の亡者だと思ってます?」

普通はお金のために戸籍に残るようなことをしようとは思わないだろう。

いくら困っていても、職場の医者と結婚なんてありえない。

離婚したあと病院にいづらくなるのは目に見えている。

それでも、弟が確実に進学できるのなら、自分は転職でもなんでもすればいいかなと思ってしまう。

「どうした、いきなり。そんなこと思ってないよ」
「そうですか」

ホッとした私は、すすめられた椅子に座る。

笠原先生は正面に座り、こう続けた。

「俺は槇のこと、家族思いのいい子だって思ってる。あと正直で、裏表がない」

先生の長い指が、婚姻届けの空欄をなぞる。

あとは私たちふたりの名前を書くだけだ。

「私、そんなにいい子じゃないかもしれませんよ」

最近知り合ったばかりと言っても過言じゃない私のことを、どうしてそんなふうにとらえてくれるのか、疑問でしかない。

先生は私と結婚することに不安はないのだろうか。

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