離婚前提婚~冷徹ドクターが予想外に溺愛してきます~
そんなわけで、私は笠原先生の言葉に励まされ、この病院に就職したのだ。

けれど、循環器外科に出した配属の希望は通らず、今の消化器内科に回された。

笠原先生は科が違うせいかほとんど姿を見ることもなく、お礼を言う機会も今のところない。

消化器内科は癌の患者さんも多く、内視鏡検査や化学療法などを学ぶにはとてもいいところだった。

もちろん失敗もあるし、先輩に叱られて泣いたこともあるけど、今のところまだくじけていない。

あのとき励ましてくれた笠原先生のおかげで、私は今ここにいる。

その本人に会えるなんて。

いやそりゃ循環器外科に異動になったんだから、いつかは一緒に仕事をできるだろうけど。

まったく心構えをしていなかったので緊張する。

私はICが始まる少し前に患者さんを車いすに移乗して病棟を出発し、外来に案内した。

患者さんは五十代男性。職場で胸の痛みを訴えて救急搬送された。

隣には付き添いの奥さんがいる。丸っこくてかわいい感じの奥さんだ。

「循環器外科病棟から来ました。笠原先生のICはどちらでしょうか」

外来の受付に部屋の番号を聞き、ドアの前で待つ。

< 11 / 246 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop