離婚前提婚~冷徹ドクターが予想外に溺愛してきます~
「槇さん、あなたを担当に指名したのに、どうして来てくれなかったの」

そもそも担当の看護師を指名すること自体が間違っているのだけど、私は素直に頭を下げる。

「すみませんでした」
「どうせ私に会いたくなかったんでしょ」

安藤さんは真夜中に私の腕をつかんだことを覚えているのかな。あれは怖かった。

自分が嫌われるようなことをしておいて、いつも被害者面。

そういう人に会いたいとか仲良くしたい人って、この世に何人くらいいるんだろう。

しかし素直にうなずくわけにもいかず、ただうつむく。

相手は患者さんだ。この人は怪我は完治しているけど、心が病んでいる。

「あなたたちが望むとおり、退院してあげる。これで満足でしょう」
「そんな……」
「いい看護師のフリをして、バカな患者のことを笑っていたのよね」

安藤さんが詰め寄ってくる。

不穏な空気を察し、師長と主任、そして千葉くんが私たちを取り囲んだ。

しかし安藤さんはこの前みたいにつかみかかってくるでもなく、すっと後ろに引いた。

< 186 / 246 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop