離婚前提婚~冷徹ドクターが予想外に溺愛してきます~
「きみのほうが家が遠いから、先に乗りなさい」

先生に言われ、研修医さんがうなずく。

「わかりました。ついでだから乗っていきます?」

さっき話していて、家が近いことがわかったらしい千葉くんが誘われる。

「やったー。よろしくお願いしまーす」

千葉くんはウキウキして同じ方向へ帰る研修医と一緒にタクシーへ乗り込んだ。

まったく、調子のいいやつめ。

もう一台のタクシーに、笠原先生が乗ったら、私はひとりで駅まで歩かなきゃいけないじゃない。

いくら明るい通りとはいえ、真夜中に女性ひとりで歩かせる?

心の中で千葉くんの薄情さを呪っていると、笠原先生が私の肩を叩いた。

「きみが乗っていくといい」

笠原先生がタクシーを指す。まさかそう来るとは。

「いえいえ、私は電車で帰りますので」

タクシー代もったいないし、お金持ちだったとしても、先生を差し置いて先にタクシーに乗るなんてできない。

あの研修医と千葉くん、遠慮が足りないんだから。

先生が先に行っていいって言ったとしても、普通は目上の人が先でしょうよ。

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