離婚前提婚~冷徹ドクターが予想外に溺愛してきます~
ひとりならそう思えるけど、相手がいるときにまったく言い返せなかったのが悔しい。

結局、自分が相手を納得させられるだけの実力がないんだ。勉強不足だからだ。

ぐすぐす泣いていると、突然実習室のドアが開いた。

『おお。びっくりした』

振り向くと、驚いた顔をしたドクターが立っていた。

青いスクラブの上に白衣を着ているので、たぶんドクターだろう。薬剤師なら白シャツを着ているはずだ。

まだ二十代に見える彼は、前髪をセンター分けにした黒髪が爽やか。

目鼻だちがくっきりしている、華やかな顔。手足が長くて高身長。

芸能人だと言われても違和感ないくらいのその人に、私は一瞬見惚れてしまった。

『学生さん?』
『す、すみません。お邪魔しました!』

時計を見るともう五時半。実習の時間はとっくに終わって、他の班員は先に帰っている。

指導室には電子カルテが見られるパソコンがあり、学生がいない期間はドクターがここで仕事をしたり、患者さんに話をすると聞いた。

ここも今から使うのだろう。

慌てて出ていこうとした私を制し、ドクターはドアを閉めた。

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