冷酷な御曹司に一途な愛を注ぎ込まれて



「遅くなりました。釣り銭の準備ありがとうございます……」


 橘さんは私と川本くんをジロリと見るなり「衣服についてはマシになったな。川本は作業に入れ。相澤はそのボサボサの髪をどうにかしてこい」と、鬼のようなことを言われ、会社のロッカーに入れていたクシとヘアオイルで整える。


 「やっぱり帰れ」と言われないだけマシだった。


 解いた髪をヘアゴムでひとつ結びにした後、橘さんの前に顔を出す。


「お待たせしました、作業入れますでしょうか……」

「んなこと聞かなきゃ分からないのか? おまえは新人かよ。まあいい、今日は合格。作業に入れ」


 なんとか合格をもらい、店内をモップで掃除する。

 日本に戻って来ていたなんて知らなかった。

 以前とまるで別人の橘さんに『母親から逃げたいから付き合ってる振りをしてください』なんて頼めるわけがない。


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