冷酷な御曹司に一途な愛を注ぎ込まれて
「それに、お恥ずかしい話、手持ちが少なくて川本くんに立て替えてもらっているんです。なので、このお金は川本くんに渡してください」
握らせられたお札を橘さんへ返す。けれど、橘さんは受け取ろうとしない。
「川本にも後で服代は渡す。手持ちが少ないんなら、尚更持ってろ。返さなくていいから」
「そういうわけにはいきません」
「じゃあ、そのお札は捨てるなり、募金に回すなりしといて。はい、お疲れさん」
橘さんは「ほら、さっさと帰って仲直りしろ」と私の背中を押す。そのまま連れ出されるようにお店から出されてしまった。
捨てるわけないし、明日生きるのも必死な状態なのに募金に回せない。受け取ったお金は有り難く財布に仕舞う。
橘さんは何時までお店に残るんだろう。
いつまで日本にいるのだろう。
明日にはニューヨークに帰ってしまったりしないだろうか。
3年ぶりに会った橘さんは昔のように物腰柔らかで、接しやすい態度とは異なっていたけれど、でも、にこりともせずとも、昔のように心配はしてくれる。
年齢イコール彼氏なしだけれど、私は橘さんが好きだった。
本社のニューヨークに異動になることが決まっていたため、気持ちを伝えることはしなかった。
押し込めていた想いがまた溢れてしまわないように、深く深呼吸をする。