プライベートレッスン
なんなんだこの展開は・・・ありえないだろ。
赤坂エリがシャワーを浴びて、その後に俺とキスをする?
そんなワケないだろ。
「本当は夢なんだろ?」
さっきから頬をつねっているのだが何回つねっても痛みしか残らない。
「どうすればいいんだよ、赤坂エリとキスだぞ?」
想像しただけで体が震えてしまい体温が上昇する。
「覚悟を決めろよ三島光一!男だろ!」
ブツブツと独り言を言いながら彼女の台本のページをめくった。

1ページ目に赤鉛筆で「はじめの一歩!頑張るぞ!」と書かれてある。
2、3ページ目は今日撮影した所だった。赤鉛筆で「ガマン、ガマン」と書かれてある。
3ページ目の最後に「誰か助けて」と書いてあり、その文字は涙で滲んでいた。
孤独な彼女の心の叫びは死にそうになるぐらい俺の体中を痛みで覆った。
悲しくて悲しくて涙が出た。けっこう大量に出た。
数時間で希望を失われた彼女の心の痛みが一文字でわかった。
「どうしてそんな風に笑っていられるんだよ、バカだなぁ」
俺は滲んだ文字を人差し指で優しくなでる。
「ポポポー ポポ、ポパイの~ポ~」
彼女の呑気な鼻歌が聞こえて来てクスクスと笑った。


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