筋肉フェチ聖女はゴリラ辺境伯と幸せを掴む
「白き結婚?」
「形だけの夫婦ということだ。それを突き通せば結婚より三年で離縁出来る。その際に分与された金で、好きな男に嫁げば良い。だから三年はこの醜男の妻という立場で我慢してくれ……出来るだけ怖がらせぬよう、近寄らぬようにするから」

 まるで諭すような……いや、懇願するかのような声。「頼むから三年だけ耐えて欲しい」と言葉を重ねられるのは……自己肯定感の低さだろうか。それとも急にレオン様に婚約破棄されやって来た私に対する優しさだろうか
 
(こんな素敵な筋肉が目の前にあるのに……近寄れないの?)
 
 治癒院で走り回っていた時は人の筋肉しか見ていなかったので、お顔に見覚えはない。しかしこの体付きを見れば、間違いなく騎士や兵士といった肉体を資本として戦に参加し戦果をあげたのだと理解できる。絶対に魔術師では無い。
 近寄らなければ筋肉を堪能できないので白き結婚にされては困る。完全にその筋肉に惚れてしまった私は、その逞しい腕に縋るように触れた。

(わあぁぁ! 何この筋肉、弾力が最高!)

「なっ! ちょっと待ってくれ、そんな格好で触れられては……」
「ブレイズ様、お願いします。私は筋肉ムキムキの逞しい男性が好きなのです。心の底から大好きなのです!」

 縋りながらブレイズ様の顔を見上げると、その顔は赤く染まっていて。私が嫌われている可能性は無さそうで安心する。
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