筋肉フェチ聖女はゴリラ辺境伯と幸せを掴む

赤薔薇の聖女

 初っ端から「抱いてくれ」なんて、とんでもない発言を繰り出した私。でも私、こんな素敵な上腕二頭筋の男性になら今すぐ抱かれても良い!

「……ちょっと待ってくれ。その格好に台詞、何か勘違いしていないか? それとも魅了の魔法か何かを掛けられて来たのか? この醜男に抱かれたい女なんぞ、存在する訳がないだろう」 

 ブレイズ様はソファーの前で床に膝をついたまま、眉間に皺を寄せる。
 漆黒の髪と瞳。健康的な小麦色の肌に、彫りが深く渋い顔立ち。恐らく歳上で、好みの筋肉。これで惚れるなと言う方がおかしい。好き。外見が好みすぎて思わず震える。

「ほら、そんなに震えて……無理しなくていい」
「違います、これはブレイズ様にときめいてキュンとしていたせいで」

 レオン様グッジョブ。婚約破棄してくれたおかげで私、こんな素敵な人に出会えました!
 
「キュン? ……よく分からないが、まぁいい。そもそも俺は、この結婚は白き結婚にするつもりだと言いに来たのだ。美しき王子に婚約破棄された上こんな男に当てがわれ、さぞ辛かろう。そう自らの身を粗末にしなくても追い出したりはしないから、安心してくれ」

 ブレイズ様は自分の胸を強めに叩く。服越しでもパァンと良い音がした。
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