パパになった消防士は初恋妻を燃え滾る愛で守り貫く
 私たちは大輝に手を引かれるまま、『ふれあい動物園』と書かれた大きな東屋のような場所へやってきた。足元には羊や山羊が歩き回っていて、別の柵の中にはうさぎ、モルモット、ひよこまでいる。

「可愛いね!」

 思わず私のテンションが上がってしまったが、颯麻は初めて見るやぎや羊の大きさにびっくりしてしまったよう。私の足元にペタリとくっつき、引きつった顔で「抱っこー」とせがんでくる。

「大丈夫だよ、颯麻。動物さんはモフモフで気持ちいから!」

 抱き上げながら、そっと羊さんの横に寄る。そのまま颯麻の手をとり、そっとその背に触れさせてみた。

「ね?」

 けれど颯麻はすぐに手を引っ込めてしまう。
 仕方なく、私が手を伸ばす。

「ほら、モフモフしてて、あったかいよ! 癒される……」

「梓桜はモフモフ好きだったもんなー」

 極上の温かさを感じていると、そんな声が不意に頭上から降ってくる。

「夏なのにモフモフの袖の服着たり、モフモフのストラップ携帯とか鞄につけて――」

「わー、それはもう昔の話でしょ!」

 ケラケラ笑いながら言う大輝を、慌てて止める。

 恥ずかしい。アラサーになって、子供の前で、高校時代の痛いファッションを出されるなんて。

 けれど、そんなことまで覚えてくれている大輝を、ちょっとだけ愛しいと思ってしまった。
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