パパになった消防士は初恋妻を燃え滾る愛で守り貫く
 顔を洗い、荷物を準備した。
 母はまだ起きていて、私の準備する後ろにいてくれた。

「颯麻くん、どう?」

 聞きづらそうな、控えめな声。

「大丈夫だったよ、けいれんも治って。検査のために入院するから、私も付き添わなきゃいけなくて、だからまたすぐ出てくけど大丈夫だから!」

 声が震えてしまいそうで、早口にそう言う。
 泣き晴らした顔を見られたくなくて、背を向けたままだ。

「大丈夫? 送って行こうか?」

「ううん、平気。お母さんは、お父さんの隣にいてあげて」

 私のことは、私で何とかする。
 これ以上、親に迷惑をかけるわけには行かない。

 落ち込んでいた気持ちは、少しだけ前をむけるようになった。
 後ろ向きな自分は、先ほどの涙と一緒に、少しは流れて行ったらしい。

 自分ができることは、自分でやらなきゃ。
 ふう、と息をつき、荷物を背負い、再び外に出た。

 鼻を刺すような真冬の夜の空気が、私を奮い立たせる。

 なのに。

「え、大輝……?」

 玄関の外には、また大輝が立っていた。

「病院まで送ってく。どうせ、俺の家あっち方面だから」
< 88 / 249 >

この作品をシェア

pagetop