愛より深く奥底へ 〜救国の死神将軍は滅亡の王女を執愛する〜
無邪気に遊ぶ彼女に、えもいわれぬ気持ちになった。
瞳のことも立場も忘れ、彼女を笑顔にしたい気持ちだけが満ちた。
「殿下の髪は月光を編んだように美しく、瞳は星のように輝かしい」
騎士が姫に一目ぼれするシーンを指定され、ヒルデブラントはそう語った。
姫役の人形はいわばエルシェの分身だ。吟遊詩人のようにはできなかったが、人形の騎士に託して彼女をほめたつもりだった。
目論見通り、彼女は自身をほめられたかのように満足そうに微笑んだ。
エルシェが作った物語は、悪者が王様を騙して王女を連れ去り、騎士が助けにくる話だった。
「姫君、助けに参りました!」
人形を操り、ヒルデブラントが言う。
「ありがとう、騎士様!」
姫役の人形を動かし、彼女が答える。
飽きることなく何度も続けられたそれは、最後には父との誤解が解けてお城に帰り、みんなに愛されてめでたしめでたしで終わる。
夕方、クライヴが迎えに来るまで、二人は遊び続けた。
帰路、ヒルデブラントは言った。
「離宮に行かれるときはまた俺を……私をお連れください」
クライヴは驚いたが、彼女の境遇に彼が自分を重ねたことは容易に想像がついた。
両者の慰めになればいいと、承諾した。
翌日、ヒルデブラントはクライヴに執務室に呼び出された。
入室した彼は、硬い表情のクライヴを見て緊張した。
よくない話だ、とすぐに察した。
「王女殿下の警護の任を解かれた」
言葉の裏を探し、黙った。
「王女は国に破滅をもたらすと予言され、王宮の尖塔に幽閉された」
ヒルデブラントは驚愕した。
エルシェが父王のいる王宮に帰りたがっていたのは人形遊びからもわかった。だが、無実の罪で幽閉されるために戻されるなど、なんという皮肉だろう。
「予言を真に受けるなどバカげている。だが、国王の決定だ」
ヒルデブラントは目を細めた。
クライヴは貴族には珍しく誠実だ。
だが、だからこそ権謀術数には弱い。騎士であり、政治には無縁でもある。
瞳のことも立場も忘れ、彼女を笑顔にしたい気持ちだけが満ちた。
「殿下の髪は月光を編んだように美しく、瞳は星のように輝かしい」
騎士が姫に一目ぼれするシーンを指定され、ヒルデブラントはそう語った。
姫役の人形はいわばエルシェの分身だ。吟遊詩人のようにはできなかったが、人形の騎士に託して彼女をほめたつもりだった。
目論見通り、彼女は自身をほめられたかのように満足そうに微笑んだ。
エルシェが作った物語は、悪者が王様を騙して王女を連れ去り、騎士が助けにくる話だった。
「姫君、助けに参りました!」
人形を操り、ヒルデブラントが言う。
「ありがとう、騎士様!」
姫役の人形を動かし、彼女が答える。
飽きることなく何度も続けられたそれは、最後には父との誤解が解けてお城に帰り、みんなに愛されてめでたしめでたしで終わる。
夕方、クライヴが迎えに来るまで、二人は遊び続けた。
帰路、ヒルデブラントは言った。
「離宮に行かれるときはまた俺を……私をお連れください」
クライヴは驚いたが、彼女の境遇に彼が自分を重ねたことは容易に想像がついた。
両者の慰めになればいいと、承諾した。
翌日、ヒルデブラントはクライヴに執務室に呼び出された。
入室した彼は、硬い表情のクライヴを見て緊張した。
よくない話だ、とすぐに察した。
「王女殿下の警護の任を解かれた」
言葉の裏を探し、黙った。
「王女は国に破滅をもたらすと予言され、王宮の尖塔に幽閉された」
ヒルデブラントは驚愕した。
エルシェが父王のいる王宮に帰りたがっていたのは人形遊びからもわかった。だが、無実の罪で幽閉されるために戻されるなど、なんという皮肉だろう。
「予言を真に受けるなどバカげている。だが、国王の決定だ」
ヒルデブラントは目を細めた。
クライヴは貴族には珍しく誠実だ。
だが、だからこそ権謀術数には弱い。騎士であり、政治には無縁でもある。