愛より深く奥底へ 〜救国の死神将軍は滅亡の王女を執愛する〜
 陰謀の裏をかいて思い通りにする案など思いつくわけもなく、従って、無実と思われる王女を救う(すべ)を持たなかった。
(よわい)五つの子を幽閉など」
 クライヴはため息をついた。
 ヒルデブラントはなにも言えなかった。
 国王が専横を振るっていることは聞いていた。クライヴだけではなく、ほかの貴族もぼやいていたし、奢侈(しゃし)のおこぼれにあずかろうとする者も多い。
 現在の王妃に血道を上げて言いなりだということも有名な話だ。
 前王妃はハリクスの横暴を諫め、善政を敷くように言葉を尽くしていた。
 前王妃は善き王妃であったとの評判に、マデリエは不快を隠さないとも聞く。
「マディリニーア王妃の捏造では……」
「めったなことを言うな」
 言いかけたヒルデブラントを、クライヴは遮った。
「もう離宮に行くことも殿下にお会いすることもない。話はそれだけだ」
 クライヴはヒルデブラントに下がるように手で合図する。
 ヒルデブラントは頭を下げて部屋を辞した。
 胸には言い知れないものが渦巻き、心を乱した。
 彼にはなんの夢もなかった。
 騎士になるべくクライヴの下にいるが、望んだ道ではなかった。そうするしかなかっただけだ。
 このときから彼には一つの目標ができた。
 騎士となり名を上げて、必ずや彼女を救い出す。

***

 ヒルデブラントの話を聞くうちに、エルシェの頭にかすめるものがあった。
 離宮を訪れる男性がいたことは覚えていた。
 彼が連れて来た少年のことも、うっすらと蘇って来た。
 確かに人形で少年と遊んだことがある。
 幽閉の騒動で、すっかり忘れ去っていた。
「私は親からも周囲からも疎まれ、十四にして生に飽いていた。それを救ったのは殿下でございました」
「私が?」
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