愛より深く奥底へ 〜救国の死神将軍は滅亡の王女を執愛する〜
「幼きあなたが私の瞳を綺麗だとおっしゃいました。それが私の心を救いました」
「そんな子供のたわいもないことを」
「あのときの私に、それほどの救いはなかったのですよ」
瞳が綺麗。
よくある賞詞だ。社交辞令のように使われ、すりきれた表現。
だが、その摩耗した言葉すら彼にかけられたことはなかったのだ。
「宝物と言ってくださった。その言葉こそが私の宝になりました」
つたない言葉の中から選びとられたそれは、心の氷を溶かすには充分だった。
「私は投獄されたあなたを救うための道を探しました」
彼は話を続けた。
***
ヒルデブラントはまず、書物を読み漁った。
人に聞くことははばかられた。
迂闊なことをすればクライヴの立場が悪くなってしまう。
彼は平等に扱ってくれた。
頑なだったヒルデブラントは容易にそれを受け入れられなかったが、エルシェが彼の心をほぐした今、痛いほどにわかった。
人の噂に耳をそばだてた。有益な情報を探し、考え続けた。
同時に自分を鍛えた。
仲間が休憩している間にも体を鍛え、やりすぎだ、とクライヴに咎められた。
休養もまた体の糧となる。
それを何度も教えられ、焦る気持ちを押さえ、無理矢理自分を休ませた。
騎士として戦うには機を待つ忍耐も必要だ。
まだ若く、気が逸る彼にはそれこそが強敵となった。
人との関係の有用性も冷静に考えた。
自分と同じくクライヴに仕える少年たちへの態度を改めた。
クライヴに騎士道を説かれ続けていた彼らは、すぐに彼に心を許した。
長年寝食をともにしたことで、ヒルデブラントが死の使いではないと理解していたことも大きかった。
ヒルデブラントは反省した。
常に周囲のせいにして自分の心を閉ざして来た。
だが、周囲が冷たかった責任は自分にもあったのだ。
どれだけ祈ってもエルシェを救わない神とは決別した。むしろ無実の罪に落とした神は敵だ。
「そんな子供のたわいもないことを」
「あのときの私に、それほどの救いはなかったのですよ」
瞳が綺麗。
よくある賞詞だ。社交辞令のように使われ、すりきれた表現。
だが、その摩耗した言葉すら彼にかけられたことはなかったのだ。
「宝物と言ってくださった。その言葉こそが私の宝になりました」
つたない言葉の中から選びとられたそれは、心の氷を溶かすには充分だった。
「私は投獄されたあなたを救うための道を探しました」
彼は話を続けた。
***
ヒルデブラントはまず、書物を読み漁った。
人に聞くことははばかられた。
迂闊なことをすればクライヴの立場が悪くなってしまう。
彼は平等に扱ってくれた。
頑なだったヒルデブラントは容易にそれを受け入れられなかったが、エルシェが彼の心をほぐした今、痛いほどにわかった。
人の噂に耳をそばだてた。有益な情報を探し、考え続けた。
同時に自分を鍛えた。
仲間が休憩している間にも体を鍛え、やりすぎだ、とクライヴに咎められた。
休養もまた体の糧となる。
それを何度も教えられ、焦る気持ちを押さえ、無理矢理自分を休ませた。
騎士として戦うには機を待つ忍耐も必要だ。
まだ若く、気が逸る彼にはそれこそが強敵となった。
人との関係の有用性も冷静に考えた。
自分と同じくクライヴに仕える少年たちへの態度を改めた。
クライヴに騎士道を説かれ続けていた彼らは、すぐに彼に心を許した。
長年寝食をともにしたことで、ヒルデブラントが死の使いではないと理解していたことも大きかった。
ヒルデブラントは反省した。
常に周囲のせいにして自分の心を閉ざして来た。
だが、周囲が冷たかった責任は自分にもあったのだ。
どれだけ祈ってもエルシェを救わない神とは決別した。むしろ無実の罪に落とした神は敵だ。