愛より深く奥底へ 〜救国の死神将軍は滅亡の王女を執愛する〜
「今しばらくは模索なさってください。いつか必ず、時は来ます」
「無責任なことを言うな! なぜあの方が滅びを呼ぶと宣したのだ!?」
「神の言葉でございます」
「嘘をつくな!」
「嘘ではございません。予言は私には制御ができないのです。いつも唐突に神が訪れ、つぶやいていかれる。周囲に人がいるときもあれば、いないときもあります」
ゼンナの声は冷静だった。
「あの方が国を滅ぼすと申し上げたときには人がおりました。あなた様があの方をお救いし、国を救うと神がおっしゃられたときには周囲には人がおらず、私しか存じません」
「どうしてそんなことが起きるんだ」
「神にどのような御意志があられての所業なのか、人の身たる私には計りかねます」
ゼンナは即答した。そこに迷いはなく、延命を請う響きもなかった。
「ときどき思うのです。神は人の世に一石を投じ、人々が右往左往するさまを楽しんでいるのではないか、と」
ゼンナは女神官でありながら、神の在り方に疑義を抱いている。
察したヒルデブラントは短剣を下げた。
「私を信じていただけたのですね。ありがとうございます」
ゼンナは振り返り、礼を言った。
淡い月明かりが、彼女の濃い疲労を浮き上がらせていた。
***
「ゼンナが、予言を……」
エルシェは驚いて彼を見た。
「ご存じなかったのか」
「知りませんでした」
エルシェの目が暗く伏せられた。
「彼女は献身的に世話をしてくれたのです。お話によれば私を助けようともしてくれた様子です。ゼンナは悪くないと思います」
ゼンナもまた神のきまぐれに翻弄された被害者だと思った。神のしでかした予言により、罪悪を感じてエルシェを救おうとしてくれたのだろう、と。
「殿下はどこまでも善人でおわしめす」
ヒルデブラントの口の端が皮肉に歪んだ。
「無責任なことを言うな! なぜあの方が滅びを呼ぶと宣したのだ!?」
「神の言葉でございます」
「嘘をつくな!」
「嘘ではございません。予言は私には制御ができないのです。いつも唐突に神が訪れ、つぶやいていかれる。周囲に人がいるときもあれば、いないときもあります」
ゼンナの声は冷静だった。
「あの方が国を滅ぼすと申し上げたときには人がおりました。あなた様があの方をお救いし、国を救うと神がおっしゃられたときには周囲には人がおらず、私しか存じません」
「どうしてそんなことが起きるんだ」
「神にどのような御意志があられての所業なのか、人の身たる私には計りかねます」
ゼンナは即答した。そこに迷いはなく、延命を請う響きもなかった。
「ときどき思うのです。神は人の世に一石を投じ、人々が右往左往するさまを楽しんでいるのではないか、と」
ゼンナは女神官でありながら、神の在り方に疑義を抱いている。
察したヒルデブラントは短剣を下げた。
「私を信じていただけたのですね。ありがとうございます」
ゼンナは振り返り、礼を言った。
淡い月明かりが、彼女の濃い疲労を浮き上がらせていた。
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「ゼンナが、予言を……」
エルシェは驚いて彼を見た。
「ご存じなかったのか」
「知りませんでした」
エルシェの目が暗く伏せられた。
「彼女は献身的に世話をしてくれたのです。お話によれば私を助けようともしてくれた様子です。ゼンナは悪くないと思います」
ゼンナもまた神のきまぐれに翻弄された被害者だと思った。神のしでかした予言により、罪悪を感じてエルシェを救おうとしてくれたのだろう、と。
「殿下はどこまでも善人でおわしめす」
ヒルデブラントの口の端が皮肉に歪んだ。