愛より深く奥底へ 〜救国の死神将軍は滅亡の王女を執愛する〜
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彼女の六歳の誕生日。
ヒルデブラントはゼンナを介してエルシェに本と菓子と小さな花束を贈った。
彼女が喜んだと聞いて、うれしくなった。
花は本よりも安価だったので、出来る限り贈るようにした。
彼女に贈った薔薇が押し花のしおりになって帰って来たときには驚いた。
たまたま一本の薔薇しか手に入らなかったのだ。だが、なにゆえかことのほか喜び、贈り物にして返してくれた。それが彼を喜ばせた。
彼は職人に専用のロケット式ケースを作らせ、常に身に着けた。
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「やはり、あの花はあなた様がくださったのですね」
エルシェは目に涙を浮かべて彼を見た。
「やはり、とは」
「一年前にあなた様が私をたずねてくださいました。あのときから、花の贈り主があなたであればいいと願っておりました」
ヒルデブラントの目が細められた。
隠しようのない幸福が金銀の目を満たし、だが、一瞬で消え去った。
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十八歳になり、ヒルデブラントは騎士に叙勲された。
クライヴから離れ、宿舎に入った。
ここからだ、と身をひきしめた。
友人たちの中には花街に出掛ける者もいた。
ヒルデブラントは誘われても一切応じなかった。
心に秘めた女性がいるとか不能だとか男色だとか噂が立ったが、一向に構わなかった。
エルシェを救うためには力が必要だ。
そのためには、出世しなければならない。
ヒルデブラントはそれだけに肝胆を砕いた。
武闘大会があれば積極的に参加した。
小さな大会からはじめ、一年後には国王主催の大会でも優勝を飾るほどに成長した。