彼は『溺愛』という鎖に繋いだ彼女を公私ともに囲い込む【episode.2】

 新入社員や中途採用の人だって、会社や業種について学んだりする時間があるというのに……。私は本当に、そういう方面は知らないので、不安でならないのだ。

 だから、彼が入るより先に、氷室商事へ勉強に行きたいといったのだ。

 彼が転籍するまでもはまだ日にちがかなりある。その間に私があちらに行って、事前に会社について勉強する。そうすれば向こうへ行った彼の秘書として少しはやっていけるかもしれない。

 * * * * 
 
「はあ……やっぱり反対されました」
 
 今日は、彼の兄である氷室商事専務の陽樹さんの奥様京子さんとお茶をしている。

 彼女はいずれ私の義姉になる方だ。そんな彼女も夫の秘書をしたことがきっかけでそのまま結婚している。兄弟そろって同じことしか考えないなんてあきれるほど仲良しだ。
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