たった独りの物語~私を殺そうとしている女の子を自分の手で育ててしまいました~
なんて教えない。
「はい,どうぞ。大したものじゃないけど,お腹に溜めるには十分でしょ」
「もちろん! この卵もお姉さんが採ったの?」
兎と共に外から持ち込んだのを見られたらしい。
「そうよ。手軽で家畜にするにはもってこいなの」
私も席について手を合わせる。
(頂きます)
心で唱えて,焼いたパンにかぶり付いた。
贅沢にトッピングされたそれらの味をじゅわりと楽しんで,自分で発現させた水を飲む。
気持ちのいい朝だった。
それにしても鶏と違ってぽこぽこ出産したりなどしない兎が,とうとうなくなってしまったらしい。
(今日は森に行くか,変装して街に下りるか。……もう兎は要らない気もするわ)
「あぁ,先に聞くべきだった。あなたはコーヒーと水,どっちがいい? 全部私の魔法産だけど」
水なんて引いてあるわけがない。
思い出して尋ねると,その子は申し訳なさそうに選ぶ。