たった独りの物語~私を殺そうとしている女の子を自分の手で育ててしまいました~

なんて教えない。



「はい,どうぞ。大したものじゃないけど,お腹に溜めるには十分でしょ」

「もちろん! この卵もお姉さんが採ったの?」



兎と共に外から持ち込んだのを見られたらしい。



「そうよ。手軽で家畜にするにはもってこいなの」



私も席について手を合わせる。



(頂きます)



心で唱えて,焼いたパンにかぶり付いた。

贅沢にトッピングされたそれらの味をじゅわりと楽しんで,自分で発現させた水を飲む。

気持ちのいい朝だった。

それにしても鶏と違ってぽこぽこ出産したりなどしない兎が,とうとうなくなってしまったらしい。



(今日は森に行くか,変装して街に下りるか。……もう兎は要らない気もするわ)



「あぁ,先に聞くべきだった。あなたはコーヒーと水,どっちがいい? 全部私の魔法産だけど」



水なんて引いてあるわけがない。

思い出して尋ねると,その子は申し訳なさそうに選ぶ。

< 9 / 238 >

この作品をシェア

pagetop