碧い空の下で
 中3のある日。美花は母親と父親、妹の家族全員で、カラオケに出かけた。

歌う事が大好きな美花は、ラジオやテレビで聴いて覚えた最新の曲や、好きなアーティストの曲をたくさん歌っていた。

当然、家族がそれぞれ歌っていた。そして、美花は、いくつか曲を歌いきった後、笑顔で、半分冗談っぽく家族に言った。

「私やっぱり歌うの好きだなー。カラオケも好きだし。私、歌手になろうかなー。」


冗談みたいに言ったけど、実は本気だった。美花は、小さい頃から歌手になることが夢だったのだ。

そんな美花の言葉に、家族みんなが笑って言った。

「歌手!?確かに美花はカラオケはうまいけど、それだけじゃ歌手なんか無理だよー。美花なんか無理無理!」


そう言われて、美花は笑って

「だよねー。歌手なんて無理だよねー」

と返したが、心の中ではとても悲しかった。でも、無理だと言われる事はわかっていた。美花の両親は、二人とも世間体を重んじる人だったから。

この時美花は、顔では笑っていたけど、めちゃめちゃ傷ついてしまった。

それ以来、歌う事もやめ、音楽すら聴かなくなり、テレビを見ることすらしなくなった。カラオケもその日以来全く行かなくなった。

高校2年のこの日まで。
カラオケでの言葉で心を閉じた美花。しかし、またカラオケによって、美花の人生はガラリと変わる事になるのだが、待ち合わせ場所に着いた美花は、そんな事夢にも思っていなかった。




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