追放された薬師は、辺境の地で騎士団長に愛でられる


 昼過ぎになり、ようやく患者が途切れた。こんなにたくさんの患者を観たのは、合戦時の治療に呼ばれた時以来だ。あの時はへとへとだったが、今は意外にも元気だ。数日間、ジョーと歩きっぱなしの旅をしていたからかもしれない。

 ジョーか。今ごろ、ジョーは何をしているのだろう。私のこと、覚えてくれているかな。
 ジョーのことを考えると、急に胸がどきんと甘く鳴った。ジョーのことで、頭がいっぱいになってしまう。だけどいけないと首を振る。何より今は、治療だ。

「ソフィアさん!今のうちに、薬草を取りに行ってきますね!!」

 そう告げて、ようやく裏にある薬草園へと向かったのだ。

 

 
 治療院の薬草園は、王宮薬草園ほどではないが、とても大きかった。そこに様々な薬草が植わっている。状態がいいものもあるし、萎れているものもある。萎れているものは、きっと水のあげすぎだろう。

 薬草のいい香りを嗅ぐと、王宮薬草園を思い出してしまった。
 師匠、元気にされているかな。師匠からいただいたたくさんの知識が、今ここで役立っていることに改めて気付く。
 そして、師匠の薬草園に近付くためには、この薬草園に足りないものがまだまだたくさんある。

 私は急いで薬草を摘み、治療院へ戻る。そしてそれを洗い、皮を剥いたり切ったり煮たり。
 ソフィアさんは、こんな私をずっと興味深そうに見ている。

 ある薬草の根の土を落とし、屋根先に吊るしていると、

「その薬草、根は使えないんじゃないの?」

 ついにソフィアさんが聞いたのだ。だから私は答える。

「確かに根に栄養はありません。
 ですが、これを干して粉にしたものは、子供でも飲みやすい甘い解熱剤になります」

「そうなんだ!」

 ソフィアさんは、目をキラキラさせて私の話を聞いている。新入りの私を拒絶することだって出来るのに、こうやって認めてくれているのだ。

「アンちゃん。そこの小鍋のものは?」

「あれは精神安定剤のブレンドです。
 あれを飲むと心が落ち着き、ぐっすり眠れます」

「じゃあ、この汁は?」

「筋肉弛緩剤です。
 針に付けて動かない手や足に刺すと、筋肉を緩めて動くのを助けてくれます」

「すごいね、アンちゃんって!私の知らないことばっかりで!!」

 もちろん、自分の技術を自慢するわけではない。だが、こうも褒められると嬉しいのも事実だ。私のほうが年下で、新入り薬師なのに!
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