追放された薬師は、辺境の地で騎士団長に愛でられる
治療院まで、周りをきょろきょろ見回しながら急いで帰った。幸いなことに、途中黒い騎士には会うことがなかった。
足は震えもつれるが、必死に治療院までの道を走る。そして扉を開けて崩れるように中に入ると、
「あれ?アンちゃん?」
何も知らないソフィアさんが、驚いた顔で私を見る。
「デートはどうしたの?」
「そ……それどころじゃなくて……」
なんて言いながらも、胸がずきんとした。
私が国王殺害の罪を被っていることを知ると、ソフィアさんはどう思うだろう。せっかく仲良くなって、二人で楽しくしていたのに、私を追い出したいと思うだろうか。……そうだよね、罪人を匿っておくなんてリスクを誰もが背負いたくない。それは、ジョーも、オストワル辺境伯だって同じだ。
「なっ……なんでもないです!」
「そうよね!」
ソフィアさんは、私が帰宅したことに変な誤解を抱いているようだった。
「アンちゃんにはジョセフ様がいるもの。
ジョセフ様よりもいい男なんて、そうそういないわ!」
分かっています……でも……今の私には、色々な弊害がありすぎるのだ。