クールな御曹司と初恋同士の想い想われ契約婚~愛したいのは君だけ~
佐山の協力のおかげで定時内に仕事の区切りをつけることができた美緒は、会社を出たその足で兄の悠真の自宅を訪ねた。
九歳年上の悠真は美緒の大学入学と同時にそれまでふたりで暮らしていた家を出て、職場近くのマンションで恋人の天野千咲と暮らしている。
年齢差があるせいか、悠真は昔から美緒に甘い。
とくに美緒が中学二年生の時に両親がそれまで経営していた食品会社を廃業し、母親の実家のオーベルジュを引き継ぐために長野に移り住んでからは、必要以上に美緒を心配するようになった。
両親に代わって自分が妹を守らなければと、責任を感じているのだ。
その気持ちはありがたく感謝もしているが、美緒も二十六歳でひとり暮らしも順調だ。
悠真には自分自身、そして恋人の千咲を優先してほしいと思っている。
「丈もぴったりだし、デコルテも綺麗に見えて素敵。美緒ちゃん、本当にありがとう」
千咲はリビングに置いた全身鏡の前に立ち、深紅のパーティードレスを身につけた自身の姿に声を弾ませた。
このドレスは年明けに友人の結婚披露宴に出席する千咲のために美緒が仕立てた品だ。
シフォン素材のドレスはカシュクールの胸元が艶やかで、膝丈の裾の部分は同系色のサテンで縁取っている。
たっぷり作ったフレアが動くたびに揺れ、千咲の長い足が更に綺麗に強調されている。